先日、お客様から「黒飯(こくはん)」についてご質問頂きました。
「このあたりで黒飯を作ったり食べたりする習慣がありますか」とのことでしたが、私が知る限りそうした習慣はありませんので、初耳ですとお伝えしました。
その後、母と父に訪ねてみたところ、ふたりとも「聞いたことがない」とのこと。
黒飯はお葬式などの仏事に使われるご飯で、黒豆を使って炊くのだそうです。
どのあたりの地域で作られる料理なのか、少しインターネットで調べてみました。
【北海道 / 全域】
◆黒飯(こくはん)
赤飯とは違ってご飯に色がつかない「黒豆を使ったおこわ」の事で、弔事に食する。
葬式や法事の食事の際に折詰で出されることが多く、仕出し屋等で注文ができるそうです。
【秋田県 / にかほ市、横手平鹿地域、湯沢雄勝地域】
◆てんこ小豆の赤飯(てんこあずきのせきはん)
秋田県では、てんこ小豆(黒ささげ)と呼ばれる小豆を使って、砂糖で味付けした赤飯を作る習慣があるそうです。
盆正月、冠婚葬祭には必ず赤飯が作られ、また、天寿を全うした方の大往生を祝う不祝儀の際は「黒飯」と呼んで食べる風習があるとのこと。
【石川県 / 全域】
◆みたま(御霊)
黒豆(黒大豆)ともち米を蒸した黒豆のおこわのこと。
地域や人によっては、その見た目から「めだま」と呼ぶことも。
お通夜の際は仏前に「みたま」が供えられ、集まった人たちで分け合うそうです。
先祖の供養のため、お盆の十五日にも食べる他、法事や建前(上棟式)の引き出物として贈られる習わしがある。
(※火事を連想させるため、赤く染まる小豆は使わないとのこと。)
【富山県 / 東部】
◆黒豆おこわ/みたま(くろまめおこわ/みたま/白ごわい)
正月などのおめでたい日には赤飯、その他の祭りなどの行事の際には黒豆を使った「黒豆おこわ」が作られていて、現在は県内のほぼ全域で、葬式や法事といった弔事に食べる習慣がある。
仏前に供えたり、直会の席での御膳に出されたり、引き出物として頂く事もあり。
黒部市の宇奈月地区では、黒豆とともに在来種の雑穀イナキビを加えた「きびおこわ」を秋にこしらえ、神棚や仏壇にお供えする習慣があるそうです。
【長野 / 佐久地方】
◆御黒飯(おこくはん・ごこくはん)
黒豆が入ったほんのり甘いおこわ。
【兵庫県】
◆丹波黒豆ごはん(たんばくろまめごはん)
田植えや祝い事、法事などには黒豆ごはんが炊かれる。
かつては、6月の「さびらき(早苗開き、早開き)」の際に、炊きたての黒豆ごはんを丸めて朴葉に包み、家の神棚や田んぼなどにお供えしたそうです。
(※不祝儀の際はご飯を白いまま仕上げる「白蒸し」にして食べるとのこと。)
この他の地域でも、たくさん作られていました。
(※今回はレポート的にまとめている記事を参考にさせていただきました。)
ただ、こうした「黒飯」の習慣が減ってきているとの指摘もありました。
自宅で葬式をしない家が増えたことや、新型コロナウイルスの影響もあって、身内のみで済ませる「家族葬」が流行していること。そうしたことから、大事な「こと」があったときに貴重な「もち米」を使って、心を分け合うという「おこわ飯」の文化が廃れつつあるのでは、・・・と。
(当店も、父の高齢化により御赤飯のお誕生日プレゼントを止めてしまいましたので、耳が痛かったです。)とはいえ、ご質問のおかげで、各地の行事食が知れて大変勉強になりました。ありがとうございました。